ドイツの都市内鉄道

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Stuttgart の U-Bahn

 Stuttgart はドイツ南東部 Badenwürttemberg 州の州都であり、56万人の人口を擁する。 盆地内に市街地が形成されているため、市街地にラックレイル式の鉄道(一部併用軌道もある!)や ケーブルカーがあることでも知られている。

 この Stuttgart で現在都市内公共交通の中心を担っているのは U-Bahn である。

 U-Bahn といえば Untergrundbahn すなわち「地下鉄」と言う意味であるが、Stuttgart の U-Bahn は Stadtbahn とも呼ばれる路面電車の延長線上にある交通機関である。もともと Stuttgart には路面電車があった(今も細々と活躍している)が、メーターゲージで車体幅が狭いため、輸送力が十分でなく、また Stuttgart の地形上の制約から、道路上を走る以上、急勾配・急曲線を避けることが出来ず、近代的な交通機関とは言えなかった。現在の U-Bahn は路面電車の利点を出来るだけ生かしつつ登場した近代的な都市内交通機関と言える。

Stuttgart の U-Bahn (Dobelstraße〜Olgaeck)

 三線軌が確認できる。現在この区間にはメーターゲージの車両は営業列車としては乗り入れないが、工場への入場用に残されているようである(未確認)。

 またこの区間は専用軌道が一方向しか確保されていないが、逆方向に関しても、列車の運行と自動車用信号の動きを連動させることで定時運行を確保している。

具体的な特長
歴史
 Stuttgart の U-Bahn の歴史は1966年まで遡るといって良いだろう。現在のU1系統の経路となる Marienplatz 〜 Charlottenplatz が地下化されたのである。以後1983年までに都心部のトンネルが完成している。日本では新交通システムがもてはやされていた時期だ。この時点ではまだ従来の路面電車網の一部が地下化されただけである。

 標準軌化・高床化され、現在の U-Bahn の車両が走り出しだのが1985年、U3系統からである。このときまでに Möhlingen 〜 Vaihingen 間が三線軌化され、Möhlingen には車庫が設けられた。

 以後80年代後半には市の中心部を東西に走るU1・U14・U9系統が相次いで U-Bahn 化された。続いて90年代始めには Olgaeck 〜 Degerloch の大幅な線路改良が行われ、中心部を南北に走るU5・U6系統が U-Bahn 化され、新規開業の Killesberg Messe に向け、U7系統が新設されている。なおこの時点でU7系統は Killesberg Messe 〜 Albstraße であった。別項で取り上げた、最も大きな線路改良を伴う Olgaeck 〜 Ruhbank が完成したのは1998年である。このときにU7系統は Ruhbank まで乗り入れるようになり、ほぼ現在の運行系統が完成している。

 なおこれらは主要区間の開業の歴史に過ぎず、実際には郊外区間での区間延長や線形改良も地道に行われてきた。

現状と将来
 列車の運行はおおむね5時から24時まで、日中の運行間隔は10分であるが、日中は運転区間が短縮される系統や、運行されない系統もある。早朝深夜には最大で20分程度間隔が開く。

 これまでに2・15系統を除く全ての市電が U-Bahn によって置き換えられたわけだが、2002年中に2系統の U-Bahn 化、同時に東へ延長する事が決定しており、工事中である。また15系統に関しても2005年までには U-Bahn によって置き換えられる見込みで、路面電車の U-Bahn 化が貫徹されようとしてる。
<追伸(2002/08/26)>
市電の2系統はU-Bahnに置き換えられました。

参考資料(PDF フォーマット・独語)
 U-Bahn・Straßenbahn 路線図(105KB)
 DT8.10 型車両諸元(683KB)
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Wuppertal のモノレール

 Wupper 川沿いの町々を結び、世界初の懸垂式モノレールとして1900年に開業したのがWuppertal のモノレールである。 既存の市街地に鉄道を通す為、多くの区間でWupper 川の上を走行することとし、懸垂式モノレールで建設されることになった。

Wuppertal のモノレール (Hammmerstein〜Bruch)

 写真のような3車体連接車で運転されていて、 扉は片側のみ(写真と反対側)前後の車体に外吊り両開きのものが2箇所ずつついている。

全駅共対向式ホームであり、終端駅はループ線で折り返す配線である。 また途中駅では上写真のようなターンテーブルで折り返す。

 日中でも約5分ヘッドで運転されており、また開業100周年を迎えた2000年を前後しエスカレーターの設置など各種の更新工事も行われており今後も 便利な市内交通として利用されていくことであろう。

参考資料(PDF フォーマット・独語)
 モノレール路線図(10KB)

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Karlsruhe の S-Bahn

 最近の路面電車復権の機運の中で有名になったのが、鉄道線と軌道線との直通を実現した Karlsruhe である。日本でも法規上の「鉄道」と「軌道」との直通運転は存在するが、Karlsruhe の鉄軌直通運転は、ICE定間隔運行の幹線も含む鉄道線と併用軌道上を走る純粋な路面電車との直通であり、意味合いが異なる。 このような運行形態が採られるようになった背景としては、 が考えられる。 また当然のことながら、鉄道線で求められる交流集電・高速性能と軌道区間で求められる直流集電・低速域での加速性能を両立し、なおかつそれを低床車に収めることが可能になった、という技術的な理由も大きい。 実際 Siemens はこの目的の為にコンバータ・インバータの小型化に取り組んでおり、この技術が国際的にも評価され、日本のE501系などにも使われていることは周知の通りである。

Karlsruhe の S-Bahn (Bretten Stadtmitte 付近)

3車体連接車1〜2編成による運行である。両端の車両は乗降がスムーズになるように通路を広く取った設計であるが、真中の車両は長距離客を考慮してか2+2のクロスシート配置で、ドアがない。なお一部の車両は真中が食堂になっているようだ。通常の営業列車で営業しているのか、はたまたイベント用なのか、用途は不明。

 ところで Karlsruhe というと鉄軌直通運転ばかりが大きく取り上げられるが、決してこれだけが旅客需要を掘り起こしたわけではない。 非電化路線の電化・駅の増設・単線区間での交換設備の増設・パークアンドライド用の駐車場整備等のおなじみの地道な努力も行われている。 非電化で日に数える程しか列車の来なかった路線に20分ヘッドで列車が来るようになった区間も存在するのは、このような総合的な努力の結果であろう。 もちろん中心部への車の乗り入れを規制していることも大きい。日本ではまだまだLRTが超低床車による路面電車という程度にしか認識されず、システムとして、あるいは政策の一貫としてLRTが考えられることが少ないのは残念である。

 最後に鉄軌直通列車は題の通り S-Bahn として運行されていることを付け加えておく。「S-Bahn = 国電」という認識は決して正しくないことはこのことからも解るであろう。

参考資料(PDF フォーマット・独語)
 Karlsruhe 路面電車等路線図(114KB)

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